本研究は輪郭線中に埋め込まれた折れ曲がり刺激に対する刺激選択性を詳細に調べることにより物体の形状を表現する神経メカニズムを明らかにすることを目的とする。この為に麻酔下のサル第二次視覚野より長時間安定な細胞外記録を行い受容野内外の局所的な入力の時空間特性を探る。これまでの結果は折れ曲がり表現の形成において受容野内の局所情報に加えて受容野外からの文脈依存性の修飾作用が重要な役割を果すことを示す。今年度はこれらの結果をさらにサポートするものとして、大澤五住教授(大阪大学)らと共同でLSRC逆相関法による受容野の時空間特性と折れ曲がり刺激選択性との関係を調べた。逆相関法による記録ではもっぱらランダムノイズ刺激を用いてきたが、鋭角の折れ曲がりに選択性をもつニューロンでは反応が著しく抑制されるケースが多々みられた。また、Dr. Yi Wang(Chinese Academy of Science)による薬液注入電極に改良を加えて単一細胞の活動記録中にGABAa受容体の拮抗阻害剤(Gabazine)を記録部位に微量注入して抑制性シナプスの活動を阻害して抑制性入力の寄与を薬理学的に調べた。薬剤投与とともに発火頻度が上昇し、長い直線刺激に対する反応が上昇する一方、周辺抑制はそのまま維持される例がみられた。例数が依然少ない為、来年度も引き続き継続して十分な数のデータを得てから結論付けたい。
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