研究概要 |
私たちは本研究課題において、嗅覚系の発達・機能構築・行動を制御する分子・細胞・神経回路メカニズムの解明を目指している。平成19年度においては特に以下の3つの項目を中心に研究を行った。 (1)BIG-2は1995年に私たちのグループが発見した新規免疫グロブリンスーパーファミリー分子である。マウス嗅覚系におけるBIG-2蛋白質の発現を詳細に解析すると、嗅細胞軸索のサブセットに特に高い発現が検出され、嗅球における糸球がBIG-2強陽性、弱陽性、陰性とモザイク状に観察された。またBIG-2の発現強度は嗅細胞における嗅覚受容体遺伝子の選択と強い相関関係を有していた。さらにBIG-2遺伝子欠損マウスを作製したところ、嗅細胞軸索の標的糸球体への集束に異常が観察された。以上の結果から、BIG-2は一次嗅覚神経系における「匂い地図」形成を司る重要機能分子であることが明らかとなった(Neuron,印刷中)。 (2)嗅球の二次嗅覚ニューロン(僧帽・房飾細胞)特異的にシナプス前部活動モニター蛋白質synaptop Hluorinを発現するトランスジェニックマウスの作製に成功した。現在このマウスを用いて嗅皮質における匂い情報コーディング様式(匂い地図)の解明に取り組んでいる(未発表データ)。 (3)ゼブラフィッシュの嗅覚神経系機能構築にCxcl12/Cxcr4ケモカインシグナリングが重要な役割を果たすことを明らかにした(Development,2007)。
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