研究計画に沿って、以下の成果を得ることができた。 (1)運動と認知における運動前野と頭頂葉の機能分担の解明 (1)-1 脳内情報の操作と保持を対比する新たな行動課題の開発 日本の伝統的な「あみだクジ」を応用して、脳内情報の操作において、よりダイナミックな操作過程と、よりスタティックな保持過程とを対比するための行動課題を開発した。 (1)-2 磁気共鳴機能画像法を用いた脳内情報の操作と保持にかかわる神経活動部位の同定 脳内情報の操作と保持にかかわる脳活動を、磁気共鳴機能画像法をもちいて記録し、脳内情報の操作自体に特異的に相関する神経活動が、外側運動前野と頭頂葉楔前部に観察されることを明らかにした。 (2)認知的手続き学習における運動関連領域の役割の解明 (2)-1 高次認知領域における複数内部モデルの同時並列獲得実験パラダイムの開発 認知的制御の比重がきわめて大きい、条件付け順序運動をもちいて複数の相反する順序運動を同時に学習する課題を開発し、学習プロトコルによる差を観察するための実験パラダイムを設定した。 (2)-2 高次認知機能における手続き学習の行動学的検討 上記の課題をもちいて、異なる操作ルールに基づく脳内情報操作学習をブロック型とランダム切替型という異なったスケジュールで学習した場合には、ランダム切替型ではブロック型に比較して、学習中の成績変化は遅いものの、翌日まで学習した手続き記憶が定着していることを明らかにした。また、学習していない新規の課題を遂行する際の成績も、ランダム切替型のほうがブロック型よりも統計的有意に改善していた。
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