研究課題
本研究ではWnt5aおよびBMP-2が損傷中枢神経の再生阻害に働いていることを見いだした。Wnt5aはin vitroで小脳顆粒細胞の神経突起の伸展を抑制し、この効果はRhoAおよびRho-kinaseに依存しており、受容体はRykを介していた。またBMP-2もin vitroで神経突起の伸展を抑制したが、これはLIM-kinase依存性であり、これまでに同定されているいずれの再生阻害タンパク質とも性質が異なることがわかった。ラットの脊髄損傷後にWnt-5aおよびBMPは、損傷周囲部のオリゴデンドロサイトならびにアストロサイトに発現上昇を示した。さらにこれらの因子がin vivoで損傷中枢神経の再生阻害に働いているかどうかを検討するために、ラット脊髄損傷モデルを用い、抗Ryk中和抗体あるいはBMP阻害剤としてのNogginを局所投与した。その結果、これら治療群はコントロール群と比較してより良い運動機能の回復を示した。また脊髄組織を検討したところ、運動機能を担う皮質脊髄路の再生現象がこれら治療群では認められたが、コントロール群では認められなかった。以上の結果からWnt-RykおよびBMPsが成体において、中枢神経損傷後の再生阻害因子として働いていることが明確に示された。本研究によって、新たな再生阻害タンパク質の同定のみならず、LIM-kinaseという新たな再生阻害シグナルの発見に至ることができた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
J. Cell Biol. 173
ページ: 47-58
J. Biol. Chem. 281
ページ: 15970-15979