研究課題
脳・脊髄損傷の血管病変のモデルとして、細菌細胞膜のリポポリサッカライド(LPS)の腹腔内投与によって脳血管内に血栓を惹起する血栓形成モデルをマウスで作成した。生体内のほぼすべての細胞が蛍光蛋白質GFPを発現しているトランスジェニックマウスにLPSで血栓形成を惹起し、経時的に2光子レーザー顕微鏡で観察した。その結果、(1)生きたままのGFPトランスジェニックマウスの正常の脳では、毛細血管、動脈および静脈の内皮細胞と平滑筋細胞が、またグリア細胞の細胞体と突起が明瞭に識別できた。(2)蛍光色素であるスルホローダミン101溶液をくも膜に滴下すると、滴下後60〜120分の間で、グリア細胞の細胞体と突起が明瞭に識別できた。(3)血管内を流れる赤血球と白血球も、1コマを速く撮影すると(毎秒16コマ)、血管内をスムーズに流れており、血管壁には接着していないことが観察できた。(4)脳の太い血管が、動脈か、静脈かは、血管内を流れる血球の向きで、枝分かれの末梢側に向かって流れる管は動脈、枝分かれの中枢側に向かって流れる管は静脈と判断された。(5)LPSによって血栓を形成させた血栓形成モデルでは、LPS投与後1日目では、脳血管の内皮細胞に白血球や血小板が接着し、血栓が形成されていた。血栓の大きさは、血管の長軸に沿った長さが50〜100ミクロンのものが多く、しかも血管を不完全に閉塞するものが多かった。血管を不完全に閉塞した血栓では、時に血栓の一部が崩落して、塞栓が末梢血管へ飛んでゆく像が捉えられた。今後は、血栓形成促進因子と線溶系の因子の効果を、in vivoで検討してゆく計画である。
すべて 2007 2006
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