研究概要 |
低分子カルシウム受容タンパク質(S100タンパク質)、Calmodulin kinase kinase(CaMKK)などの分子標的薬を開発し、これらの分子標的薬を生体系に適用することにより、S100タンパク質、CaMKKなどを介する新しいCa^<2+>シグナル機構の生理学的意義および病態学的意義を明らかにすることが目的である。 1.S100タンパク質の生物学的役割について解析を進め、3種のS100タンパク質(A1,A2,A6)がTPR domainを含むタンパク質を標的とすることを発見した。FKBP52,Cycophyillin40,Hop,Hip,Kinesin軽鎖、Protein phosphatase5の6種のタンパク質についてS100タンパク質との相互作用を解析し、S100タンパク質がTPRタンパク質のカルシウム依存性調節因子であるという仮説の妥当性が証明できた。 2.Protein phosphatase 5の酵素活性測定系を利用する新しいS100タンパク質活性測定系を案出し、良好なペプチド基質を見いだすことによりS100タンパク質拮抗薬のスクリーニング法を確立した。新開発のスクリーニング法により、S100タンパク質拮抗薬を見いだした。今後、このリード化合物をもとに選択的拮抗薬の開発を進める。 3.新規開発のCaMKK阻害薬(STO609)を利用し、新しいCaMKKの標的分子を発見した。CaMKKはAMP-kinaseのfamilyの一員であるSAD-kinaseをリン酸化し、SAD-kinaseを数十倍活性化する。神経細胞の形成に強く関与することから、新規開発のSTO609の中枢神経薬としての応用が期待できる。 4.TPRに三次元構造が類似するHEAT-repeatおよびArmadillo-repeatを含むタンパク質がS100タンパク質によってカルシウム依存的に調節を受けるか否かの検討を開始した。生体信号系として重要なimportin-α、importin-β(核移行)、protein phosphatase 2A(脱リン酸化)、β-catenin(Wnt signal)を選択した。いずれの系でもS100タンパク質による調節の可能性が示された。
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