研究概要 |
本研究では、酸化ストレス下で引き起こされる「神経細胞死」、あるいはその前段階の「神経細胞の機能障害」の発生機序を野生型マウス、Mth1、Ogg1、MutyhそしてItpa遺伝子欠損マウス及び細胞を用いて解析した。さらに、脳における酸化ストレス応答と海馬歯状回における神経新生の制御機構の解明を目指して、AP1転写因子のサブユニットをコードするfosB遺伝子とその標的の1つであるgalectin-1の機能解析を進め以下の成果を上げた。 【成果1】核とミトコンドリアゲノムDNAへに蓄積した酸化塩基(8-オキソグアニン)は複製を介してアデニンと誤対合するとそれぞれMUTYHが開始する塩基除去修復反応に依存して2つの独立した経路で細胞死を誘導することを示し、神経細胞の2つのゲノムDNAの酸化によって誘導される細胞死のメカニズムを解明した。 【成果2】MTH1/OGG1二重欠損マウスにミトコンドリア毒を全身投与すると野生型に比べて顕著な行動量の低下を認め,線条体有棘神経細胞の核とミトコンドリアに8-oxoGが著明に蓄積し,神経細胞の脱落を引き起すことを明らかにした。 【成果3】過剰の一酸化窒素に曝された細胞におけるミトコンドリアヌクレオチドプールの酸化を証明し、その結果誘導される細胞死を酸化プリンヌクレオシド分解酵素MTH1が効率よく抑制することを示し、MTH1欠損マウスで顕著なMPTP-誘導ドパミン神経細胞の変性脱落のメカニズムを明らかにした。 【成果4】酸化的脱アミノ化を受けたプリンヌクレオシド三リン酸の浄化機構としてITPaseの意義を遣伝子欠損マウスと遺伝子欠損マウス由来の線維芽細胞株の解析から明らかにした。 【成果5】転写因子FosBとΔFosBが海馬における酸化ストレス応答と神経新生の制御に関わることをノックアウトマウスとノックインマウスの解析から明らかにした。 【成果6】カイニン酸投与によりマウス海馬でGalectin-1の発現が誘導されることを見いだし、その意義を遺伝子欠損マウスを用いて明らかにした。
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