本研究課題は、遺伝子改変によって作出したセリン合成不全モデルマウスを基に脳内セリン量と」D-変換を人為制御可能なモデル動物実験系を構築し、その特性付けからセリン代謝異常と高次神経機能の連鎖を理解するための解析基盤プラットフォームの確立を目的としている。本課題では、外来遺伝子(ネオマイシン耐性遺伝子)のイントロンへの挿入によりPhgdh遺伝子の転写レベルが全身で低下している発現低下変異マウス(Phgdh^<Δ4.5/neo>)(以下変異マウスと省略)と、Cre-lox/Pシステムによるアストロサイト特異的ノックアウト(KO)マウスを用い、セリン合成能を人為的に制御したマウスを用いる。本年度は以下の項目について検討を行った、 1)変異マウスの交配条件とセリン枯渇条件の確立 変異マウスはnullヘテロ接合体(Phgdh^<Δ4.5/+>)とneoヘテロ接合体(Phgdh^<neo/+>)またはneoホモ接合体(Phgdh^<neo/neo>)との交配によって得られる。各種交配実験の結果、nullヘテロ接合体とneoヘテロ接合体の組合せによって生まれる変異マウスの生後生存率が最も高くなることがわかった。また成獣でのセリン枯渇状態作出のため、蛋白質性成分を含まず、アミノ酸のみの合成食からセリン/グリシンを含まない欠乏食を給餌による、血液、脳内各領域、肝臓、筋肉などのアミノ酸組成への影響を現在検討している。 2)GFAP-Creマウスによるアストロサイト特異的KOマウスの作成 Phgdh遺伝子にlox/P配列を挿入したfloxアリルをホモ接合体で持つ個体(Phgdh^<flox/flox>)をGFAPプロモーター支配下でアストロサイト特異的にCreを発現している同ヘテロ接合体マウスと交配することによって、アストロサイト特異的Phgdh KOマウスを得た。同マウスは胎生致死を免れ出生し、生後も通常の食餌を与えている限り見かけ上正常に発育することが明らかとなった。現在Phgdh発現と脳内アミノ酸組成の関連、脳形態等について解析を行なっている。
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