研究課題
ヒスタミン神経系は覚醒中枢の結節乳頭核(TMN)に存在するが、その入力系の詳細は不明である。そこで、内在性睡眠誘発因子アデノシンの代謝酵素アデノシンデアミナーゼ(ADA)の阻害剤(コフォルマイシン)もしくはアデノシンをTMNに投与し、睡眠覚醒に及ぼす効果を測定した。その結果、ADA阻害剤もしくはアデノシンの投与は、共にラットのノンレム睡眠量を増加させた。また、これまで睡眠調節への関与が疑問視されていたアデノシンA_1受容体の発現がヒスタミン神経に認められた。さらに、TMNへのA_1受容体作動薬(N^6-cyclopentyladenosine)の投与は用量依存的にノンレム睡眠量を増加させ、前頭皮質のヒスタミン放出を抑制した。これらの結果は、アデノシンがA_1受容体を介してTMNのヒスタミン神経を抑制し、ノンレム睡眠を誘発することを示している。また、ヒスタミン神経系を含む覚醒系神経回路の相互作用解明のため、モダフィニールによる覚醒誘発機構を解析した。過剰な眠気を伴うナルコレプシーに効果的な覚醒誘発剤モダフィニールは、野生型マウスを用量依存的に数時間にわたり完全に覚醒させた。低用量モダフィニールの覚醒効果は、ドーパミンD_1受容体拮抗薬(SCH23390)とD_2受容体拮抗薬(ラクロプライド)により消失した。高用量のモダフィニール投与の場合、D_1拮抗薬は覚醒に影響を与えなかったが、D_2拮抗薬は有意に覚醒量を減少させた。また、D_2受容体KOマウスでのモダフィニールによる覚醒効果は、野生型マウスに比べ減弱し、D_1拮抗薬の前処置により完全に消失した。これらの結果はドーパミンD_lおよびD_2受容体がモダフィニールによる覚醒に関与することを示している。また、モダフィニールはヒスタミンH_1受容体KOマウスにも野生型マウスと同等の覚醒を誘発し、ヒスタミン神経系は必須ではないことが示された。
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