ハンタウイルスは持続感染げっ歯類が感染源となる人獣共通感染症でヒトに腎症候性出血熱やハンタウイルス肺症候群という重篤な疾病を引き起こす.齧歯類は血中に高い中和抗体を保有しつつ不顕性にウイルスを排泄し続けるというきわめて特徴丙な持続感染を成立させている。本研究では齧歯類におけるハンタウイルス持続感染成立機構を明らかにすることを目的とする、昨年度までの結果で、持続感染マウスのT細胞においては抑制系のコレセプターであるPD1が高率に薬現していることが明らかとなり、ハンタウイルス感染抗原提示細胞からの何らかの不正な働きかけによって、PD1システムによる免疫抑制がCTLに起こり、結果として持続感染が成立している可能性が示された。今年度は野生ラットでの本抑制システムの実証を目指して、ラットでの感染実験を進めた。成熟ラットにハンタウイルスを実験感染し、一過性感染を誘導した。このラットからIgM検出系・リアルタイムPCRによるウイルスゲノム定量系を構築した。この二つはIgG抗体と並んで持続感染の指標となると考えられる。これらのラットを用いてこれまでに合成したソウルウィルス合成ペプチドを用いてCTLエピトープの検索を進めている。さらにベトナムサイゴン湾近郊で発見した持続感染ラットコロニー由来ウイルスの配列に準じたリアルタイムPCRによるゲノム検出システムを開発した。現在これらの解析系を用いて自然感染ラットにおける免疫の状態を解析中である。これまでの結果では自然感染ラットは高いIgG抗体を持ちながらウイルスゲノムも同時に保有し、さらにIgMも検出される。この状態はこれまでの実験マウスを用いた持続感染モデルで得られた結果と一致することから、おそらく昨年度までに解析を進めた実験感染モデルは野外の状況を反映した解析系で有ると考えられた。今後CTLの抑制と抑制系分子の発現についても解析を進あることで、持続感染成立のメカニズムを実験感染および野外例の解析の両面から明らかにすることができると考えられる
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