研究概要 |
1.ネズミマラリア原虫(Plasmodium yoelii17XL)感染時の原虫増殖性に関与するPymr1(Chr.9)領域内の遺伝子について塩基配列と発現解析を進めた結果、原虫の増殖性に関与すると考えられる極めて有力な遺伝子を見出した。この遺伝子は赤血球の分化に重要な役割を持つと推定された。一方、P.y.17XL感染における原虫の排除に関与する遺伝子領域として見出されたChr.8のPymr2領域内の候補遺伝子群(I115,I112rb1,I127ra等)の塩基配列を解析した。NC系統は複数の候補遺伝子にアミノ酸置換を伴う変異を有していたが、最有力候補のI115には変異がなかった。2.脳マラリア発症に関与する遺伝子領域Cmrl(Chr.17),Cmr2(Chr.1)を導入したコンジェニック系統にP.b.ANKAを感染させた結果、これらの領域が脳マラリア発症に関与する事が確認された。ただし、各々の領域の脳マラリアへの効果はPymr1(Chr.9)に比べ小さかった。3.本研究で作出した各種コンジェニック系統にP.c.ASを感染させて腎所見を観察したところ、いずれもNC系統同様に膜性増殖性糸球体腎炎を示した。したがって、Pymr1(Chr.9)、Pymr2(Chr.8)、Cmr1(Chr.17)Cmr2(Chr,1)の各領域は腎炎発症には直接関与しない事が判明した。4.皮膚炎誘発法として昨年度まで実施していたダニ抗原の耳介への塗布より、ダニ抗原の耳介への投与の方が安定的に皮膚炎を誘発できる事が判明した。この方法を用いて本研究で作出した各種コンジェニック系統を用いて解析したところ、Pymr1(Chr.9),Pymr2(Chr.8),Cmr1(Chr.17),Cmr2(Chr.1)の各領域は何れも皮膚炎発症に関与していることが示された。
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