研究概要 |
昨年度までに、F344/StmとLE/Stmを対象に、後発射閾値、発作症状の程度、後発射持続時間、キンドリング獲得までの刺激回数(kindling rate)を測定し、後発射持続時間とkindling rateについて、系統差があることを示した。 今年度は、7系統(LEXF2B、LEXF6B、LEXF7B、LEXF10C、LEXF11、FXLE13、FXLE16)について、上記のキンドリング表現型を決定し、QTL解析を行うことで、キンドリング感受性遺伝子座位を同定することを目的とした。各個体の測定値を系統ごとにとりまとめ、平均値を系統の表現型値とした。1,033個のSNPマーカーからなるStrain Distribution Patternを用いてQTL解析を行った。 後発射閾値は、108μA(LE/Stm)から170μA(F344/Stm)の範囲に、後発射持続時間は、7.1秒(LEXF2B)から10.7秒(F344/Stm)の範囲にあり、いずれも系統間に差はなかった(ANOVA)。一方、kindling rateは、3.9(F344/Stm)から10.3(LEXF10C)の範囲にあり、系統間に差があった(ANOVA)。系統差のあったkindling rateについてQTL解析を行った結果、第2染色体上に2つの遺伝子座(LODスコア5.8と3.2)を検出し、それぞれをAmygdala kindling susceptibility 1 (Aks1)とAks2とした。 後発射閾値は脳局所の興奮性に、kindling rateは局所興奮性の脳全体への進行に関連していると考えられている。本研究から、キンドリングモデルにおいては、脳の局所の興奮性とその全般化には、異なる遺伝要因が関与していることが示唆された。Aks1には66個の遺伝子が存在し、その中にはActb12、Gpx8、Hspb3、Itga2、Itga1、Hcn1などキンドリングやけいれんに関連のある遺伝子が含まれる。これらの中に脳局所の興奮性を全般化させるてんかん関連遺伝子が存在していると考えられた。
|