研究概要 |
運動機能麻痺者のためのFESによる動作再建において,学習制御や閉ループ制御を適用する際の問題点を解決し臨床応用を推進することを目的として,今年度は以下の研究を行った. 1.患者への情報提示手法の開発 マトリクス状電極を用いた表面電気刺激による移動感覚により情報を提示するための実験システムを改良した.電気刺激による受容感覚の安定化を図るため,刺激パルスの極性と周波数の違いによる認識能力の差を検討し,本刺激電極では,負性パルス,50Hzまたは100Hzの刺激周波数が適していることを確認した.また,静的なパターン提示と移動感覚による動的なパターン提示とを比較する予備実験では,大きな差は見られなかった.一方,電極を前腕部に装着した場合,前腕の長さ方向へのパターンの移動よりもそれに直交する移動の方が認識しやすい傾向がみられた. 2.FES制御に対する残存運動の影響の検討 cycle-to-cycle制御による歩行遊脚期の閉ループFES制御を検討するため,床反力を含めた歩行制御モデルを構築し,これを用いた計算機シミュレーションにより,表面電極の使用,健常者の筋活動に類似した制御の実現可能性を示した.また,健常者の膝関節伸展制御について実験的検討を行い,臨床試験での問題解決を進めるともに,本方式の実現可能性を確認した.一方,フィードバック誤差学習を用いた学習制御の計算機シミュレーションのために,パラメータ調整やデータ管理を容易にするシステムを開発した.これを用いて,手関節2自由度運動への適用を検証し,逆動特性モデルだけでフィードフォワード制御器を構成した場合には学習が進まない場合があることを確認した.そこで,FES制御において逆静特性モデルを含めるための簡便な学習方法を提案し,これにより,学習初期から制御の安定性が改善され,学習の進行もやや改善することを示唆した.
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