研究概要 |
1.患者への情報提示手法の開発 電気刺激パラメータとして,80μsと200μsの2種類のパルス幅について,パターン認識能力の差異を検討した.パルス幅の小さい電気刺激は,神経の選択的活性化による認識率の改善の可能性と,刺激電圧変動の抑制の効果が期待されたが,本手法においては差が見られなかった.そこで,過去の研究結果との対応のため,200μsのパルス幅を使用することにした.また,本実験で用いた7種類の提示パターンの正答率から,電極を前腕部に装着した場合,前年度と同様に,前腕の長さ方向への移動パターンを用いることがパターン認識において有用であることを確認した. 2.FES制御に対する残存運動の影響の検討 (1)cycle-to-cycle制御による歩行遊脚期のFES制御の計算機シミュレーションにおいて,制御開始時の下肢関節角度が1歩毎に変動する条件でも,概ね適切な制御を達成可能であることを確認した.これには,1歩前の誤差と制御開始時の必要角度量の2つを入力に有する2入力1出力制御器を一部に用いたこと,及び,筋の電気刺激応答特性(感度)に応じて出力メンバシップ関数を調整する機能が有効に作用したことが関係していることを確認した.健常被験者での膝関節伸展制御での検討においても,これら2点の効果により,比較的安定な制御が可能になることを確認した. (2)フィードバック誤差学習を用いた学習制御に関して,フィードフォワード制御器(IDM)の学習時の外乱の影響に関する基礎的な計算機シミュレーションを実施した.特定方向への角度変化を制限した場合には,制限を受けた筋へのIDMの刺激出力が増大する傾向が見られ,一部の拮抗する作用の筋では,IDM出力が減少する場合もあった.また,計測装置の雑音を模擬して白色性の雑音を制御出力に印加した場合には,雑音の増加に伴ってIDM出力が増加する結果となった.
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