研究概要 |
本研究では,細胞レベルでの高精度な手術的操作(細胞サージェリー)をオンチップ上で実現するための基盤技術の確立を目的とし,提案する"マイクロニードル搭載型バイオプロープ"を開発するための要素技術を検討した.得られた成果をまとめると以下のとおりである. 1.先鋭化ニードルおよびマイクロチャネルの形成技術 1)細胞への穿刺を容易にするために,集束イオンピーム(FIB)加工によって先端角15〜60°をもつ先鋭化マイタロニードル(内径3.5μm,外傷5.5μm,長さ77μm,厚さ1.0μm)を作製した 2)生産性の向上を目的とし,FIB加工を利用しない先鋭化ニードルの作製プロセスを提案し,先端径1μm以下,先端開口径0.5μm以下を有するマイクロニードル(内径3.0μm,外径5.5μm,長430μm)を一括して形成するバッチプロセスを確立した. 3)Si基板の深さ10μmの位置に直径9μm程度Q円形断面をもつマイクロチャネルの形成技術を確立した. 4)有限要素法(FEM)を用いて中空構造をもつSiカシチレバーのばね定数および共振周波数を数値解析し,デバイスの最適形状を設計した. 2.マイクロニードルの機械的強度の評価 1)細胞を模擬したゼラチンヘの穿刺実験を行い,作製したSi02製マイクロニードル(内径3.5μm,外径5.5μm,長さ77μm,厚さ1μm)が細胞への穿刺を行うための十分な強度を有していることを示した. 2)ニードルに曲げが作用した場合,破壊は荷重印加側の根元部分を起点として起こり,FEM解析による最大相当応力の発生位置と一致した.また,破壊に至る最大変位量は荷重位置(ニードル長さに相当)にほぼ比例して増加した.一例として,内径3.5μm,外径5.きμm,長さ約70μmのニードルの最大変位量は10μm程度であり,細胞(10〜20μm程度)の大きさを考慮すると,穿刺の際に曲げが発生したとしても十分なたわみ量が得られjることがわかった.
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