研究概要 |
1.細胞用繰り返しひずみ負荷装置の性能評価と改良 製作した装置を用いて細胞の接着基材である弾性膜に10%の静的伸展ひずみを与えたところ,伸展方向と垂直な方向に2%程度(伸展方向の20%)の圧縮ひずみが生じていた。伸展方向と垂直な方向には膜を拘束する改良を行った結果,垂直方向のひずみを伸展方向のひずみの1%程度にまで抑制することが出来た。また,弾性膜中央部に生じたひずみはほぼ均一であった。これにより,接着細胞に一軸の伸展ひずみを負荷することが可能となった。 2.基材の伸展により細胞に生じたひずみの計測 血管平滑筋細胞に微小ビーズを付着させて,接着基材に10%の伸展ひずみを負荷する前後の画像から細胞に生じたひずみを計測したところ,細胞に生じるひずみの大きさは基材のひずみよりも小さく,また細胞の配向方向に依存すること,核領域ではひずみが小さい傾向があることがわかった。 3.細胞の形態,構造観察法の検討 リポフェクション法で平滑筋細胞へのEGFP-アクチン遺伝子の導入を試みたが,導入効率が非常に低く,また,弾性膜を通してアクチン構造を観察出来るほどに蛍光を発しなかったため,細胞骨格の観察は力学計測の終了後に染色して行うことにした。細胞内ひずみマーカーとしてMito Tracker Greenでミトコンドリアを染色したところ,マーカーとして十分な輝度が得られた。 4.伸展ひずみ負荷前後の平滑筋細胞の力学的特性計測 10%伸展ひずみを負荷した平滑筋細胞のスティフネス分布を原子間力顕微鏡で調べたところ,ひずみ負荷によって細胞のスティフネスは上昇する傾向を示し,細胞の最高点付近でその傾向が顕著であった。
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