マイクロポンプの性能評価法には、複数の神経細胞の神経活動を同時に検出し、刺激にして発生する神経シグナルのネットワークを同時に検出する必要がある。そこで、前年度に引き続き、アメフラシ神経節の膜電位イメージング法の開発を行った。アメフラシ神経を膜電位感受性色素Di-4-ANEPPSで染色し、蛍光顕微鏡で神経節の蛍光画像を観察した。神経細胞をプロテアーゼで前処理することにより、活動電位を明確に検出できた。前年度までは、この原因は染色された細胞外マドリックスが酵素で除去されることにより、膜電位に依存しない蛍光強度が減少することによるものだと仮説を立てていた。しかし、プロテアーゼ処理によって蛍光強度が減少することがないことが解り、この仮説は棄却された。むしろプロテアーゼ処理によって大部分の神経の活動電位の時間幅が拡張し、低いフレーム速度で検出できるようになったことに原因があることが解った。また一方で、神経の中にはプロテアーゼ処理で活動電位の時間幅が縮小されるものがあることが判明した。したがってネットワークを解析するには、プロテアーゼ処理は不適当であることが判明した。そこで、プロテアーゼに替わり、カリウムチャンネルブロック剤であるテトラエチルアミン塩化物で処理し、膜電位イメージングを試みた。その結果、活動電位を有効に検出できた。このカリウムチャンネルブロック剤は、神経に与えるダメージはプロテアーゼに比べて圧倒的に小さく、有効な神経ネットワークの解析に有効である。 一方、単離した神経細胞をディッシュ中で培養し、Di-4-ANEPPSで染色し、蛍光顕微鏡で観察した。細胞を電気刺激すると、細胞体で発生した活動電位が軸索に伝播する様子を確認できた。 この技術は、バルブ機能付き電気化学マイクロポンプでの刺激による神経ネットワーク形成の解析に役立つ。人エシナプスの開発の基礎となる要素技術はほぼ完成した。
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