研究概要 |
ウイルスベクターによる遺伝子治療は、臨床応用の難しさから見直されると同時に、ウイルスベクターに代わるDDS用生体材料に注目が集まってきている。デリバリーする物も化合物、核酸,タンパク質などと多様になっており、包含機能に富んだDDS用生体材料の必要性が高まっている。特に、がん組織でのEPR効果を利用して、DDSによる抗がん剤治療は、投与量の削減、副作用の回避という点から、臨床応用での期待が大きい。 本研究では、分担者木村が、これまで開発・研究してきた包含性の高い空中型ペプチドナノキャリア(ペプトソーム)に機能を付加し、改変することで、標的特異性を付加した新規DDS用生体材料を構築することを目的としている。本研究は、ペプトソームの生体内での可視化による評価系の構築を行い、生体内動態を調べることで、腫瘍へのデリバリー効率を評価するとともに、より効率よくデリバリーできるようにペプトソームを改良することを目指した。 18年度までの研究で、EPR効果を利用して、腫瘍特異的にデリバリーできるペプトソームのサイズや、構築方法の最適化を行い、坦がんマウスを用いた実験で、極めて好ましいDDS機能を有することを確認した。19年度は、1)内包性を評価するために、近赤外蛍光色素を内包させ、実験動物を用いて、生体内動態評価を行った。生体外(in vitro)で内包性が高いことは既に検証しているが、生体内での内包状態を検証した結果、DDS材料と同じ成分を内包する材料に付加することで、安定に内包できることが分かった。また、2)ペプトソーム表面への修飾を行うことで、標的特異性を持ったペプトソームの構築を試みた。具体的には、HER2結合領域を表面に付加したペプトソームの構築を行い、HER2が過剰発現しているがん細胞への集積を調べるための実験を開始した。
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