研究概要 |
様々な生体分子応答性ゲルを合成し,その応用を目指して,1.新規な生体分子応答性ゲルの合成,2. 生体分子応答性ゲルの応用について検討し,以下のような研究成果が得られた。 1. 新規な生体分子応答性ゲルの合成 標的生体分子として抗原やDNAなどを選択し,従来と同様にポリアクリルアミド(PAAm)を主鎖とする生体分子応答性ゲルを合成した。このときの架橋剤濃度やリガンド濃度などを変化させ,ゲル構造と生体分子応答挙動との関係を検討し,リガンド濃度によってその生体分子応答性が大きく変化することを明らかにした。また,生体分子応答性ゲルの応答挙動を向上させるため,主鎖として温度応答性を示す高分子鎖を用いて生体分子応答性ゲルを合成した。温度応答性成分を導入した生体分子応答性ゲルは温度によって異なる応答性を示した。しかし,生体分子の非特異的吸着によってその生体分子応答性は阻害された。 2. 生体分子応答性ゲルの応用 DNA応答性ゲルのリガンドDNAに蛍光ドナー分子とアクセプター分子を導入し,標的DNA存在下でゲルが膨潤する際に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって蛍光強度が変化するクロモフォア導入DNA応答性ゲルを合成した。塩基配列の異なるDNAに対するクロモフォア導入DNA応答性ゲルの膨潤率変化と蛍光強度変化を調べ,DNAの塩基配列によって膨潤率と蛍光強度が大きく変化することが明らかとなった。また,同様の方法で抗原に応答して体積変化する抗原応答性ゲル膜を調製し,抗原存在下におけるモデル薬物の透過挙動を調べた結果,抗原濃度に応答して薬物放出がコントロールできた。したがって,生体分子応答性ゲルを用いることによって,新規な診断センサーシステムやドラッグデリバリーシステム(DDS)を構築できると考えられた。
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