従来まで我々は、既存の眼底カメラに血流画像化機能を組み込む方式の眼底血流画像化システムを開発してきたが、これでは測定画角が狭く、十分な機能を発揮できなかったため、本研究では専用の眼底血流画像化装置の研究開発に取り組んだ。先ずレーザースポットを縦長にし、眼底に2面隣接して投影する光学系を開発し、1回の照射で画角約30度の範囲にレーザーを照射できるようになった。しかし試作装置では左右のレーザースポットの光量バランスが悪く、血流マップの特性が左右で若干ずれることが分かったため、次年度における課題とした。次に広い面積の血流分布を画像化する際に不可欠の、眼底移動に対するトラッキング手法の改良を行った。レーザー光による血流マップの移動情報を基にした従来の方法では、トラッキング精度に限界があったため、補助光として黄色LEDを眼底に照射し、インコヒーレント画像を用いたトラッキング技術を開発した。これによってトラッキング精度は向上したが、可視光のため被験者にとってはかなり眩しく、このストレスによって血流が変化する可能性も考えられた。そこで今年度は実用化の第一段階として、画角をやや絞り、無散瞳で手軽に測定できることに主眼をおいた装置の開発に切り替えた。その結果、画角が横20度×縦12度で、画素数は横700ドット×縦360ドット、測定時間最長10秒の試作機が完成した。この装置は眼底カメラ部、顎台、XYZステージ、PCにより構成され、既存の眼底カメラと似た外観となっている。また内部固視標により視線を誘導し、視神経乳頭部から黄斑部までの広い範囲を一回の測定で画像化できる。九州大学眼科などで、本試作装置の評価実験を開始している。
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