今年度は画角を横20度×縦12度と当初の計画よりやや絞り、無散瞳で手軽に測定できることに主眼をおいた装置を開発した。この装置は眼底カメラ部、顎台、XYZステージ、PCにより構成され、既存の眼底カメラと似た外観となっている。高感度CCDカメラを新規に採用したため、眼底を照射するレーザーレベルを抑えられ、眼に対する安全性を確保できた。画像をPCのメモリーに取り込むための専用フレームバッファメモリーボードを開発し、最長8秒間の連続画像を取りこぼしなく転送できるようになった。また眼底カメラ部の内部に固視標を設置し、視線を誘導することにより、眼底の目的部位の血流を確実に画像化できるようにした。内部固指標はLEDマトリクスを用いているが、これを十字型に点灯することにより、中心視力の悪い黄斑変性症の患者もある程度の固視が得られるようになった。本装置により、視神経乳頭部から黄斑部までの広い範囲を、一回の測定で画像化できるようになった。当研究室発のベンチャー企業では、これを原型とした臨床用医療機器の開発と製品化を開始し、平成20年1月に製造承認を得た(医療機器認証番号:220AGBZX00001000)。平成20年4月4日付けではあるが、本装置の基本特許である「広視野型眼底血流画像化装置」が国内特許第4102888号として確定し、九州工業大学の新たな知的財産となった。次年度に開発する装置では、画角切替機構やスプリットイメージによる合焦判定機能を取り入れて操作性の向上を図り、より完成度の高い電子眼底血管造影装置の完成を目指す。
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