今年度は前年度に製品化した眼底血流画像化装置に以下の改良を加え、性能向上に取り組んだ。当初の計画通りレーザースポットを眼底に2個並べて照射できるようにレーザー照射光学系を変更した。観察光学系を全面的に見直し、作動距離を広げて欧米人のように眼球が顔面より奥にある場合も測定できるようにした。レーザー光束が瞳孔を通過する位置を正確に設定できるよう、瞳孔を観測するカメラと赤外照明光を組み込んだ。また従来機で最も難しかった眼底画像のピント合わせを補助するために、上記の2個のスポットが合焦位置で接する機構を組み込んだ。これによりスポットの間隔を見ながら正確にピントを合わせられるようになった。またこれらの機構により、将来画角の拡大も可能になった。 測定ソフト、解析ソフトの改良もユーザーの意見に従って精力的に進められた。心拍に同期して血流が変化する様子を波形として捉え、これを特徴づける物理量を研究した結果、波形の歪度が有効であることが解った。脈絡膜の血流波形の歪度が年齢と共に増加し、末梢血管抵抗の増加との関係が示唆された。網膜血管と背景血流を分離する技術も進歩し、別々に血流値や波形を数値で読み出せるようになった。トラッキングのアルゴリズムも改良され、平均血流マップは蛍光眼底造影によって得られる画像により近くなった。従来までは矩形のラバーバンドしか描けなかったが、楕円形やその内部を4分割するなど、視神経乳頭部の血流分布の解析に有効な機能も追加し、臨床に利用しやすくなった。
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