本研究では、ヒトを含む動物臓器内部の血流、特に子宮内胎児手術の代表的な症例である、双胎間輸血症候群(TTTS)の胎盤吻合血管レーザ凝固術において、吻合血管の血流を可視化する特殊内視鏡に関する装置開発を目的とした。生体組織中において近赤外波長領域(800〜900nm)に蛍光を発するインドシアニングリーン(ICG)を光造影剤として用いるICG蛍光画像化手法を利用することで、近赤外光に対して吸光度が低い血中ヘモグロビンを可視化するICG蛍光硬性鏡の開発を行った。 3年計画の最終年度である本年度は、昨年度までの開発要素を組み合わせて可視光・蛍光観察モード切替機能付・高感度特殊内視鏡システムを構築し、システム総合評価と動物実験における胎盤観察評価を行った。妊娠ウサギを用いた動物実験では、昨年度までに確立した蛍光観察の実験系に基づき、可視光・蛍光モード切替時の画像比較、高感度化を確認した。 また、安全性を確保するために、臍帯ではなく、妊娠母体の耳静脈からICGを注入し、胎盤血管部分の黒抜け画像観察、及び画像の時系列変化観察も並行して行った。さらに、ICGの妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないことから、臍帯へのICG移行について評価を行った。その結果、妊娠ウサギ母体は、ヒト成人の測定で得られるようなICGの肝代謝、血漿消失のパターンを呈していた。一方、臍帯側すなわち胎仔側ではICGは検出されず、その移行はほぼ生じないと考えられた。
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