4次元fMRI(動態fMRI)は時間情報を持ったfMRIであり、課題遂行中に刻々と変化してゆく脳活動を特徴づけることができる。前臨床評価として、本計画で開発を進めてきた4次元fMRIアプリケーション「BAX Tool Box(http://www.medgrid.org)」を用いて、脳腫瘍による運動麻痺例を対象とした計測データの動態解析を行ない、健常人と比較した。治療歴が1年以上あり運動訓練を行っていた症例では障害側の運動を行った時に、同側の運動野群が強く活動したが、運動麻痺が発生して間もない症例ではそのような変化が見られなかった。さらに、同一部位の脳組織であっても、本来の中枢として活動している時に比べて、代償的な活動の場合にはt値の上昇が遅いことが観測された。これは、組織損傷に対する機能再構築過程では、神経回路の組織化が疎であり、同一の神経組織であっても、どのような神経回路の一部となるかで動作が異なる事を反映しているものと考えられた。 動態解析により、施行課題内容の変調により各脳領域が関連づけられる事を前年度までに明らかにした。この手法をさらに進めて、課題変調による応答関数の類似性から、神経活動連関(functional connectivity)を推定する試みを行った。指運動を使った実験では、右運動前野と左側の運動野との結合は、系列運動の生成に相関することが示唆された。このように、動態解析により神経回路の動的な特徴が探れるものと期待された。 「BAX Tool Box」や動態解析の機能を組みこんだfMRI用データベースシステム「BAXSQL」の改訂と使用解説書の作成し、Web上での公開を行った。以上の成果は、平成20年度中に英文原著4報、国際会議等での発表9報、英文解説1報、邦文解説1報、国内学会での発表5報として発表された。
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