研究概要 |
脳卒中患者の多くに上肢麻痺が伴うが、従来は健側上肢による代償で済まされ、患側上肢の訓練は放置されがちであった。本研究代表者らは、健側上肢を拘束して麻痺側上肢で段階的訓練課題(Shaping項目)を実施するCI療法にロボット技術を併用した新たな上肢リハビリ療法「ハイブリッドCI療法」を開発すべく、平成18年度より脳の可塑性を効果的に誘導できる訓練課題の開発と、この訓練課題を実現する簡易なリハビリロボットの開発、更には臨床評価による実証を目指してきた。 最終年度の20年度は、ロボットを用いたCI療法のShaping項目の検証とロボット訓練ソフトのより効果的な使用法を検討するために,慢性期の患者に対して、先ずロボット単独の訓練5症例を行い、上田式12段階グレード(上肢)、Fugl-Meyer Asessment、MALAOU,MAL QOM、の評価において、全ての症例に肩・肘の関節運動の改善を認めた。その結果を踏まえ、ロボット訓練を従来のshaping項目に組み込んだハイブリッドCI療法の効果を5症例において検証した結果、上記の諸評価に加え、上田式グレード(手指)においても改善が認められ、肩・肘・手・手指の関節運動の改善とともに,日常生活の質も向上した。ロボット単独の訓練を実施した患者からは「生活の中で劇的な変化には至らないが、手が使い易くなった」、ハイブリットCI療法を実施した患者からは、「手は以前より使い易くなった上に、生活の中で使うようになった。」との感想が聞かれた。一方、ロボット技術面では、グリップ部に振動機構を取り付けてブレーキ制御による仮想現実感の力覚に振動刺激を付加することで、関節の共同運動パターンを防ぐ促通手法を考案した。更にメカ駆動と画像が別のOSで動いていた制御系を一元化(RT-Linux)させて完成した。
|