研究概要 |
先端的テクノロジーを障害者・高齢者の支援技術に応用するには、障害者・高齢者のニーズを把握し、また、技術をユーザの立場から客観的に評価していくシステム構築が不可欠である。そのために,開発プロセスへの当事者参加の重要性が叫ばれている。そこで本研究では、ユーザと開発者・支援者を適切に結びつけるコーディネータの養成カリキュラムの開発,およびユーザ本位のコーディネート・システム構築を目的とした。 19年度までにカリキュラムは開発されており、20年度は、コーディネータを養成しながらそのシステムの確立を目指した。養成プログラムについては昨年度までの内容に加えてデンマークで開発されたLiving Libraryという手法を取り入れる事が可能かどうかを試行し、障害理解を深める上での有効性が示された。 一方、支援技術の進歩は著しく、最新の知識をどのように修得し、高い専門性を保つかが課題として上がった。対面型研修は頻繁な実施が困難であり、障害のある当事者には参加バリアが高い。それをクリアする手段としてビデオ会議システムを用いて支援技術に関する研究ミーティングへの参加をコーディネータに求める事とした。東京大学中邑研究室で毎週開かれるこのミーティングでは支援技術に関する意見交換が行われており、その中で上がった製品情報が支援技術製品データベース(http://at2ed.jp/)に反映される。このHPのプログでは、議論の内容がアップされ参加者がプログ上でも研修できる仕組みにもなっていた。そこで昨年度から研修プログラムに参加する筋ジストロフィ者4名に参加を依頼した。彼らはミーティング時に上がった製品情報の詳細なスペックを企業に問い合わせる事を仕事として委託され、この仕組みによって働きながら常に専門性を高める循環システムが構築できた。参加者の1名は企業の製品評価の仕事を個人的に受注しており、本研究は障害者雇用の観点でも新しい方向性を示せたと考える。
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