研究分担者 |
伊福部 達 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (70002102)
広田 光一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80273332)
田中 敏明 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (40248670)
山下 和彦 東京医療保健大学, 医療保健学部, 准教授 (00370198)
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研究概要 |
本年度は,本課題の初年度であるため,水素吸蔵合金(MH合金)を利用した新しいコンセプトの関節リハビリ機器の設計基盤となる基礎データを得ることを目的として,ヒトの上肢や下肢の可動範囲や機能計測を中心とした生体工学的な基礎研究から開始した.また,関節リハビリ機器に欠かせないソフトアクチュエータの動力源として利用予定の水素吸蔵合金(MH合金)の改良に関する予備調査も併せて実施した. 具体的には,まず,関節運動リハビリの対象となるユーザの上肢が取り得る範囲をリーチ可能な手先位置全域にわたって調べた.その結果,肘(屈曲角)や肩(仰角・回旋角)は手先位置の調整によってリハビリのための関節可動域訓練が可能であるが,その他の関節(例えば,手関節)に関しては,冗長性のために何らかの物理的な拘束条件をリハビリ機器に加味する必要のあることがわかった.さらに,下肢に関しては,転倒などによる骨折で関節リハビリが必要となることの多い高齢者ユーザの転倒リスクを簡便かつ安全に評価する生体計測に基づく研究に着手した.膝間力と足指力およびバランスに関連する重心動揺量について計測し,ヒューマンモデルの基礎データとした.その他では,新しい組成による関節リハビリ向けのMH合金の実現性を探る物性科学的な調査・検討を行い,従来のMH合金に比べて加熱冷却系がシンプルなアクチュエータを構成できる常温負圧型MH合金の試作に取り組んだ.また,MH合金を利用したアクチュエータの関節リハビリ機器以外の応用も視野に入れて,ヒトの移乗動作をサポートする車いす向けのシンプルな座面位置調整器に関する研究の一部を行った. これらは,ヒトの身体運動機能や心理的側面の双方に関する親和性を熟慮した,実質的に人間中心指向的な関節可動域訓練システムや福祉機器を実現していく上で欠かすことのできない研究の重要な基礎資料となるものである.
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