研究概要 |
本研究の目的は,情動発達の重要なステージにある幼児を対象として,生体・行動情報を用いた他覚的な情動評価方法を開発し,それに基づいた情動発達の支援方法を提案することにある。そのためには,2つの課題を解決することが必要である。第1は情動を自然に喚起する方法の開発であり,第2は生体情報変化パターンからネガティブ,ポジティブをはじめとする情動の質と強さの推定方法を開発することである。以上の目的を達成するために,平成18年度は以下(1)から(3)の作業を実施した。 (1)研究目的を説明し,了解が得られた保育園で行動観察をスタートした。3〜5歳児の保育場面を継続的にビデオ記録し,観察場面毎に幼児個々人の表情・行動変化を動画ファイル化した。これをもとに行動データを分析するためのカテゴリ項目を作成した。 (2)自然な情動変化を引き起こすための映像バッテリーの開発に着手した。市販されている映画,アニメーションソフトから,ポジティブな情動(喜び,優しさ,笑い,リラックス)とネガティブな情動(怒り,不安,恐怖,悲しみ)を引き起こす映像クリップを抽出した。各クリップの長さは約2〜3分に編集し,それを組み合わせた映像バッテリーを1組開発した。3〜5歳の幼児を対象として,集団視聴を実施し,その行動変化をビデオ記録した。行動データの処理結果から,情動表出には年齢による差異があるという所見が得られた(本年度の日本教育工学会で発表予定)。 (3)換気量は本年度備品した米国VivoMetfics社のLifeShirtシステムを用い,胸郭と腹部の呼吸運動から換気量を推定することを試みた。まずは成人男女を被験者として測定トライアルを実施した。現在もトライアルは継続しているが,LifeShirtシステムにより換気量変化を推定することは可能との所見を得た(本年度開催の日本生理心理学会で発表予定)。
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