研究概要 |
本研究の目的は,情動発達の重要なステージにある幼児を対象として,生体・行動情報を用いた他覚的な情動評価方法を開発し,情動発達の評価と支援方法についての検討することにある。本年度は以下(1)から(4)を実施した。 (1)自然な情動変化を引き起こすための映像バッテリーの開発を実施した。市販されている映画,アニメから,快情動を喚起するシーン(POSI)と不快情動を喚起するシーン(NEGA)を抽出し,POSI-NEGA-POSIの順序で配置した映像バッテリーを作成した。3〜5歳の幼児を対象として,開発バッテリーの集団視聴を実施した。行動データ分析結果から,情動に伴う行動変化には年齢差があることを確かめた。 (2)自由な行動場面で生体情報を測定する試みを実施した。本研究費で購入したLifeShirtシステムで得られる呼吸データから情動喚起に伴う換気量増加を推定できるか否かを検討した。その結果,LifeShirtシステムによる換気量推定値と実際の換気量との相関は0.929以上であり,回帰直線の傾きは概ね1.0であったことから,換気量の推定は可能と結論できた。 (3)これまで得られた実験データから,交感神経系と副交感神経系の活動を推定するための分析方法を検討した,その結果,圧受容体感度(BRS)による心臓迷走神経系活動の推定が有効であるとの所見を得た。 (4)母子同時視聴のトライアルを実施した。幼児と母親がアニメを視聴しているときの生体情報を計測し,情動喚起の相互作用について検討することが目的である。二者の生体情報を測定し,得られたデータの時系列を揃え,シンクロナイゼーションや引き込み現象の定量化を目指して現在作業を継続している。
|