車椅子エルゴメータを用いた車椅子駆動時の発揮パワーの測定においては、駆動系の摩擦によるパワーのロスは少ないものの、キャンバーの大きなスポーツ用のエルゴメータでは車輪の回転検出用のローラーと車輪のゴム製タイヤとの摩擦がかなり大きく、ここでのパワーのロスにより、測定された発揮パワーが過小に評価されるという問題が起きる。この問題を回避するため、本研究では被験者を車いすに乗せたまま、回転検出用のローラーをモーターで回転させ、モーターが発揮したトルクを測定し、ローラーとタイヤ間で消費されるパワーを予め計算しておくことにより、より正確な発揮パワーの測定が可能となった。このパワーのロスは人体と車椅子を合わせた車椅子系の重量と駆動の回転速度の積にほぼ比例し、ローラーとタイヤ間の摩擦(残留負荷)がほぼ車椅子系の重量と直線関係にあることが明らかとなった。 身体運動におけるパワー発揮では、身体の部位によらず、与えられた負荷によって発揮し得るパワーは異ることが知られている。したがって、最大パワーの測定は最もパワーの発揮しやすい負荷の設定で行う必要がある。本研究における車椅子駆動パワーの測定においても、被験者の障害の程度(具体的には上肢の最大筋力)によって、最大パワーの出現する負荷値が大きく異なる。本研究では、無負荷(残留負荷のみ)から5段階の異負荷値を設定し、各々の負荷で10秒程度の全力駆動を行わせ、各負荷での発揮パワーを予め測定した。得られた結果から、負荷とパワーの関係を2次曲線で近似し、パワーが最大となる最適負荷値を推定し、その負荷値で最大パワーの測定を行った。この方法により、最大値が最も出やすい負荷による最大パワーの測定が可能となった。
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