研究概要 |
平成18年度は、高齢者と若年者の転倒中動作を多角的に検討するために、後方転倒計測システムを用いて、後方への転倒経過局面における体幹筋・下肢筋の筋放電開始時間、足関節・膝関節・股関節変動開始時間及び変動値を比較・検討した。 被験者は、高齢者6名(高齢者群)及び若年者7名(高齢者群)を対象とした。試技条件は,自分で転倒を開始する自発的転倒(VOL),後傾角度5度(5deg)及び後傾角度10度(10deg)の3条件とした。被験者には、安全性の確保のため、自発性転倒での動作を繰り返し実施させた。被験者の腹直筋、外側広筋、大腿二頭筋に筋電図、足関節、膝関節及び股関節にゴニオメータを装着した。すべての実験条件ごとに、筋電図からみた筋放電開始時間、各関節変動からみた反応時間を計測した。側方からのビデオ映像から、転倒中の足関節・膝関節・股関節角度、頭部及び体幹の傾斜角度を求めた。以下に結果をまとめる。 1.高齢者群及び若年者群の5deg条件、10deg条件において足関節の反応開始時間に有意な差異はみられなかったが、高齢者群の膝関節の反応開始時間は若年者群に比べ遅い値を示した。また、股関節の反応開始時間でも高齢者群の方が遅い値を示した。 2.5deg条件、10deg条件ともに高齢者群の腹直筋、外側広筋、大腿二頭筋の筋放電開始時間が、若年者群に比べ遅くなる傾向を示した。 3.5deg、10deg条件、及びVOL条件の足・膝・股関節の関節角度において、高齢者群が若年者群に比べ小さな値を示した。 4.両群の5deg条件での角度変化を比較した結果、足及び膝の関節角度で高齢者群が若年者群に比べ小さな値を示した。 5.両群の10deg条件での角度変化を比較した結果、5deg条件と同様に、足及び膝の関節角度で高齢者群が若年者群に比べ小さな値を示した。 6.両群の首の傾斜角度、体幹の傾斜角度及び首と体幹のなす角度を比較した結果、5deg条件の体幹の傾斜角度において、高齢者群が若年者群に比べ小さな値を示したが、それ以外の項目では、両群問に有意な差異はみられなかった。
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