研究概要 |
平成20年度は、16週間にわたる足と膝関節を大きく速く屈曲させるスクワット動作(転び方)の転倒局面からみた練習効果を明らかにするために、高齢者練習群10名及び対照群10名に対し、転び方を週3回練習させ、練習前後の転倒中動作を多角的に比較検討した。すなわち、後方転倒計測システムを用いて、後方への転倒経過局面における体幹筋,下肢筋の筋放電開始時間、足関節・膝関節・股関節変動開始時間及び変動値(角度、角速度)を分析し、練習前後で比較した。練習方法は、16週間週3回、膝関節を大きく速く屈曲させるスクワット動作10回である。 分析方法として、後傾角度5度条件における、筋電図からみた筋放電開始時間、ゴニオメータを用いた各関節変動からみた反応時間を計測した。側方からのビデオ映像から、転倒中の足関節・膝関節・股関節角度、頭部及び体幹の傾斜角度及び角速度を求めた。結果を以下にまとめる。 1.練習群及び対照群ともに練習前後の股関節の反応開始時間に変化はみられなかったが、練習群の足関節・膝関節の反応開始時間は練習後に有意に早くなった。対照群では、すべての反応開始時間に変化はみられなかった。 2.練習群の腹直筋、大腿二頭筋の筋放電開始時間は練習後に有意に早くなった。対照群では練習後に変化はみられなかった。 3.練習群の足及び膝の関節角度及び角速度は練習後で有意に大きな値を示した。対照群では、すべての関節角度及び角速度において練習後に変化はみられなかった。 4.体幹の傾斜角度及び首と体幹のなす角度を練習前後に比較した結果、練習群の体幹の傾斜角度は練習後に有意に小さい値を示した。対照群では、関節角度・角速度ともに練習後に変化はみられなかった。 5.これらの結果から、足と膝関節を大きく速く屈曲させるスクワット動作の16週間の練習は、転倒接地時の衝撃力を軽減する可能性が示唆された。
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