研究概要 |
近年、過栄養や運動不足といった生活習慣の悪化による肥満者数の増加が社会問題になっている。肥満は、心血管疾患の独立した危険因子である。また、中心動脈伸展性などの動脈機能の低下も、心血管疾患の危険因子になることが明らかにされている。肥満者の中心動脈伸展性は非肥満者より低下していることが報告されているが、肥満者における継続的な運動が動脈伸展性や血管内皮機能に及ぼす影響については明らかにされていない。本研究では、中年肥満男性における3ヶ月間の有酸素性運動が、動脈伸展性および血管内皮機能に及ぼす影響について検討した。中年肥満男性21名を対象として、3ヶ月間の有酸素性運動(3日/週,75%HRmax強度,40〜60分のウォーキング)を実施した。この介入前後において、動脈伸展性の指標である脈波伝播速度(PWV)と頸動脈コンプライアンスを測定した。さらに、血管内皮機能の評価として、血管内皮細胞が産生する血管収縮物質エンドセリン-1(ET-1)と血管拡張物質Nitric Oxideの代謝産物(NOx)の血中濃度を測定した。3ヶ月間の有酸素性運動の介入により、著明な体重減少が認められ、PWVおよび頸動脈コンプライアンスは有意に改善した。また、血中ET-1濃度は有意に低下し、血中NOx濃度は有意に増加した。中年肥満男性における3ヶ月間の有酸素性運動により、体重の減少と共に動脈伸展性が改善することが示された。また、血中のET-1濃度は低下し、NOx濃度は増加したことから、血管内皮機能が改善した可能性が示唆された。これらのことから、肥満者における継続的な運動は、動脈伸展性の増大と血管内皮機能の改善をもたらす可能性が示唆された。
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