本年度は自己評価スキル向上のための支援プログラムを試作し、プロドライバー28名を対象に安全教育を試みた。太田が2007年度に作成したアイカメラ付ドライビングシミュレータを運転してもらい、ドライバーの視点を録画。その録画映像をフィードバックし安全性について自己理解を図った。実験教育は、(1)運転技能についての事前自己評価、(2)アイカメラ付シミュレータ運転、(3)シミュレータ運転中の視線の動きをフィードバックすることによる安全運転の振り返り、(4)運転技能についての再度の自己評価の4つの課程から構成されている。教育の前後には公道での走行テストを行い、教育効果を測定した。プログラムの特徴は、自身の運転ぶりの振り返りにおいて、指導員が「コーチング技法」を駆使するところにある。運転者自身が持っている自らの自己評価能力をコーチング技法によって引き出し、自己の安全性についての課題を理解していくのである。教育後、参加者たちの自己評価は事前調査と比べて、有意に低下した。すなわち、過剰な自信が修正されたことになる。そして、運転行動においても安全性が上昇した。 今年度は教育実施群を設定して、その効果を検討したが、さらに教育効果を明確にするためには教育非実施群を設定してさらに検討を進めなければならない。また、高齢ドライバーを被験者として同様の効果が得られるかの検討が次年度の課題である。さらに、今年度開発が完成したコーチング技法による教育プログラムを普及するために、指導員のための教育プログラム作成が課題として残っている。
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