昨年度行ったアイカメラ付ドライビングシミュレータによるドライバー教育に加えて、実走行時にビデオ録画した映像を用いて運転行動の自己観察による教育を行った。さらにコントロール群を設けて教育効果の検討を行った。 被験者:運送会社所属のプロドライバー対象に安全教育を行った。安全教育は3つの内容であった。(1)シミュレータによる教育群28名(19年度実施)、(2)実走行録画観察群18名、(3)コントロール群7名について教育効果測定を行った。年齢は平均39歳、標準偏差11.3歳(21歳〜67歳)。 (2)の実走行録画観察による教育が行われた参加者は、一定の路上走行コースを運転し、運転中の行動を記録した。参加者は記録された運転振りを自ら観察して、自分の安全性を指導員と共に検討した。教育に当たっては、コーチング技法を使用し、自ら自分の課題発見を促すように教育方法を工夫した。教育効果測定として、テスト走行が教育の前後に2回行われ、その運転行動の分析により検討が行われた。運転行動評価は、同乗者(研究協力者)が確認、速度、一時停止などについての行動チェックリストを用い、不安全行動が観察されるたびにチェックした。 非教育群:参加者の半数は教育を行わず、2回のテスト走行のみを行い、教育群と比較検討を行った。 結果:運転行動の総合評価についてはシミュレータによる教育、実走行における録画ビデオ観察のいずれの教育においても教育後は不安全行動が教育前に比べて低下した(p<.01)。コントロール群においては変化が見られなかった。また、運転行動を合図の適切さ、安全速度、確認の3つの側面について検討を行った。シミュレータによる教育群とビデオによる行動観察群のいずれにおいても教育後、確認行動において有意な改善が認められた(p<.01)。 考察:教育群についてはシミュレータによる教育群と路上走行による録画ビデオ観察群のいずれにおいても、とくに安全確認面において有意な向上が認められた。シミュレータを用いた教育においても実走行と同様の教育効果が得られたことは興味深い。実走行による事故発生の危険性やコスト面から考えるとシミュレータによる教育の可能性の高さが確認されたことは重要である。また、本教育に用いられたコーチング技法の有効性も確認された。とくにコーチング技法による教育は参加者自らが目ごろの運転振りを振り返り、自分の安全性についての課題に気づきを与える方法として有効であることが確認され、これからの新しい安全教育方法のひとつとしての有効性が示された。
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