研究概要 |
(1)脂質合成を統御する転写調節因子SREBP-1遺伝子の肝臓における発現の日周リズム-SREBP-1は脂質合成系遺伝子群を統御する転写因子であり,以前,その発現がマウス肝臓において明瞭な日周リズムを示すことを明らかにした。また,その日周リズムの形成,変調においては,明暗サイクルと摂食絶食サイクル(給餌タイミング)の両者の影響を受けること,すなわち,一日(24時間明暗サイクル)の中の"何時"摂食するかが,重要であることを明らかにした。今回,高炭水化物食,高脂肪食,高タンパク質食摂取がSREBP-1mRNAレベルの日周リズムに及ぼす影響を調べたところ,通常食では12時間:12時間明暗サイクルの暗期(摂食期)初期にピークを示すのに対し,他の変異食ではいずれも明期(絶食期)にピークが移動した。すなわち,"何を"摂食するかがSREBP-1遺伝子発現リズムの形成に重要であるかが明らかになった。(2)オルニチンサイクル酵素遺伝子発現の日周リズム-アミノ酸分解により発生する有毒なアンモニアを尿素へと変換することによる解毒は,摂食期のみならず,体タンパク質分解の起こる絶食期にも亢進すると予想される。今回,尿素合成を行うオルニチンサイクルの5種類の酵素遺伝子群についてそのmRNAレベルの日周リズムを調べた。通常食では,多くの酵素遺伝子は明瞭な発現リズムを示さなかった。一方,高タンパク質食では,2,3,4,5番目の酵素mRNAレベルは暗期(摂食期)を中心にピークを有する日周リズムを示した。また,低タンパク質食(高炭水化物食)では,1,3,4番目の酵素mRNAレベルは明期(絶食期)後期から暗期(摂食期)初期にかけてピークを有する日周リズムを示した。従って,同酵素遺伝子群の発現は日周性の制御下にあり,アミノ酸分解に由来するアンモニアを処理する必要性から,摂食期,絶食期ともに活性化されることが示唆された。
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