研究概要 |
(1)マウス肝臓におけるオルニチンサイクル酵素遺伝子発現の日周リズムの解析:肝臓において,アミノ酸に由来するアンモニアを解毒するオルニチンサイクルは,摂食期(夜行性生物の暗期)のみならず,体タンパク質分解の起こる絶食期(明期)にも亢進すると予想され,その日周リズムの形成機構は極めて興味深い。前年度までに,オルニチンサイクル酵素遺伝子群のmRNAレベルが日周性の制御下にあり,摂食期,絶食期ともに活性化されることを明らかにした。本年度はウェスタン法によりタンパク質レベルの解析を行い,高タンパク質食では摂食期を中心に,低タンパク質食(高炭水化物食)では絶食期後期から摂食期初期にかけてピークを有する日周リズムを示すとの予備的知見を得た。(2)セクレトグラニンII遺伝子標的破壊マウスのリズム異常の解析:当該遺伝子は神経ペプチド・セクレトニューリン等の前駆体タンパク質をコードする。最近,われわれはセクレトグラニンII遺伝子の標的破壊マウスを世界に先駆けて作出した。前年度までに,同破壊マウスが,12時間:12時間の明暗サイクル条件下で24時間周期の行動日周リズムを示すことを確認した後,恒明条件に移すと約26時間周期の行動リズムを示すことを明らかにした(正常マウスは約25時間周期)。本年度は,in situ hybridization法により,概日時計中枢の視交叉上核や視覚伝導路におけるセクレトグラニンII mRNAレベルに,昼夜差,暗期における光刺激による変動が見られるか否かを検討し,差異が認められないことを明らかにした。従って,恒常的に発現するセクレトグラニンII遺伝子が概日リズムの安定化に寄与するものと考えられた。
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