1. 目的:昭和女子大学の服飾文化研究室には、明治・大正・昭和期の主として新聞・雑誌に記された服飾に関わる記事が手書き原稿で収集されてきた。それらは、挿絵・写真等を含み、暫定的に原稿用紙2万8千枚が現存する。これらは、近代服飾史の資料集成刊行を目的に分類整理が進められ、一部研究に活用される機会はあったが、その価値を充分に発揮させることができない現状であった。 服飾文化史研究においては、時代の世相を反映した新聞・雑誌・文学における記述の資料的価値は高く重要で、その適切な保管と活用が望まれる。本研究は、それらの記述データを電子化し、データベースシステムを構築することにより、研究への運用の実現を目指すものである。なお本研究課題の対象は、大正・昭和期としている。 2. 平成21年度実績概要:昨年度に引き続き、設置したサーバ機器ヘアクセスし、Webブラウザ上から検索を行うデータシステム構築の環境整備と管理を行い、データベース運用の体制作りを推進した。また、原稿用紙約3000枚分の記述と古写真の電子データ化を進め、ファイルシステム上にデータを格納した。 また項目別検索キーワードの抽出を行い、実際に格納したデータを活用して服飾を視点とした生活文化史的アプローチ方法を検討した。主に大正末から昭和初期の婦人雑誌を対象に、和・洋装の流行、小物、着装法、髪型に関する記述を検索し、社会的背景を伴う婦人雑誌の広報的役割と生活文化変遷の様相を観察した。また服飾史研究に功績ある研究者の協力を得て、その衣生活に関わる記録作成を行った。結果、改めて本システムの有効活用には多項目からの有機的な解析が求められることが示唆された。今年度までにほぼ目標値のデータ集積は行えたが、具体的な解析には原典資料の詳細な調査とデータ校正を要する。随時に取り組み成果発表としたい。
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