卵は栄養的バランスのとれた食材であるが、卵の摂取によって血中コレステロール濃度が上昇すると考えられていたり、食物アレルギーの抗原になるなどの生理的課題がある。本研究では、これらの卵の生理的課題を解決する方法について、産卵する鶏から検討を行うことを目的とした。昨年度においては、産卵鶏種の違いが卵の成分や物性、調理特性に与える影響を明らかにし、各々の特性を活かした調理加工方法を提案した。本年度は産卵鶏種の違いが卵の生理機能に及ぼす影響について検討を行った。 産卵鶏種の違いがアレルギー強度に及ぼす影響については、主要アレルゲンであるオボムコイドの性状を白色レグホーンと奥美濃古地鶏で比較した。ELISA法ならびにWestern Blotting法によりアレルギー強度を測定した結果、奥美濃古地鶏は白色レグホーンに比べて低かった。オボムコイド含量は白色レグホーンより奥美濃古地鶏の方が低く、これはポリアクリルアミド電気泳動像の染色濃度からも明らかであった。アミノ酸組成を調べた結果、奥美濃古地鶏では白色レグホーンに比べてリジンの割合が非常に低かった。これらの結果から、鶏種によってオボムコイド含量やアミノ酸組成が異なり、アレルギー強度に影響していることが示唆された。 卵の摂取が血中コレステロール濃度に及ぼす影響について、ラットを用いた動物実験により検討した。乾燥卵白を添加した高コレステロール飼料を10日間ラットに摂取させた結果、同じ動物性タンパク質であるカゼイン添加飼料を摂取した場合に比べて、血中コレステロール濃度は有意に低く、卵白による血中コレステロール上昇抑制効果が認められた。この効果は加熱後の熱変性した卵白にも認められた。さらに、白色レグホーン、奥美濃古地鶏、岐阜地鶏の卵白について同様の条件で比較した結果、産卵鶏種の違いによる影響は認められず、いずれの鶏種の卵白によっても血中コレステロール濃度の上昇が抑制された。
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