研究課題
本研究は、元・王禎『農書』「農器図譜」の、現在望みうる最良の訳注をつくることを目的とする。特に、従来の研究に致命的に欠けている、各項目ごとに付された詩文の解釈、農具に対する機械工学的検討といった点を補うため、農業史、科学技術史の研究者のほか、中国文学、農業機械工学の専門家を共同研究者に加え、訳注の検討をすすめている。本研究の研究活動は、検討会、訳注原稿の電子テキスト化、資料収集、実地調査に大別されるが、本年度の実績は以下のとおり。1 検討会(1)初歩的検討会各種版本を用いて校勘の確認作業、校注の作成、訳注の選定・追加作業、さらに過去の研究会において課題として残した問題点や、新たに浮上した問題点などについて初歩的な検討を毎月1回おこなった。(2)検討会初歩的検討会によって整理された問題点を農具史、農業機械、中国文学の専門家を含めた全員で多方面から検討。本年度の実施は以下のとおり。第九集臼杵門〓扇(6月12日)、第二集耒耜門耒耜(6月26日)、第十二集舟車門〓船(7月6日)、第二集耒耜門犂(7月13日)、第二集耒耜門牛(10月7日)2 訳注の電子テキスト化校注および訳注の電子テキスト化。第一集から二十集および雑録のうち、第一から四、九から十七集までの電子テキスト化を完了。また、検討会での議論の結果は随時反映させている。3 資料収集:「農器図譜」および農業史の関連資料・漢籍史料の収集。4 実地調査(1)国外調査:自然科学博物館(台湾台中市)にて中國古農具、農業史に関する調査、板橋林家花園(台北市)にて中國園芸史に関する調査、鹿港民俗文物館にて古農具に関する実地調査。(2)国内調査:中尊寺、平泉郷土史館、無量光院跡、毛越寺、柳の御所跡資料館、観自在王院跡(岩手県平泉町)、願成寺(白水阿弥陀堂、福島県いわき市)にて園芸史、園芸技術史に関する調査。