研究課題
本研究は、元・王禎『農書』「農器図譜」の、現在望みうる最良の訳注をつくることを目的とする。特に、従来の研究に致命的に欠けていた各項目ごとに付された詩文の解釈、農具に対する機械工学的検討といった点を補うため、農業史、科学技術史の研究者のほか、中国文学、農業機械工学の専門家を共同研究者に加え、訳注の検討をすすめている。本年度の研究活動は、検討会を中心に、訳注原稿の電子テキスト化、資料収集、実地調査などをおこなった。具体的な実施内容は以下の通り。1 検討会:各種版本を用いて校勘の確認作業、校注の作成、訳注の選定・追加作業、さらに過去の研究会において課題として残した問題点や、新たに浮上した問題点などについての検討会を月1回おこなった。2 訳注の電子テキスト化:訳文および校注、訳注の電子テキスト化。現段階の作業は、検討会での議論の結果、訂正、追加された箇所を電子テキストに反映させる作業を中心とする。3 資料収集:京都大学各図書館を中心として、「農器図譜」および農業史の関連資料・漢籍史料の収集をおこなった。4 実地調査:沖縄県立博物館(沖縄県那覇市)、中村家住宅(中頭郡北中城村)、今帰仁村歴史文化センター(国頭郡今帰仁村)、上江洲家住宅(島尻郡久米島町)にて、伝統農具と農業技術史に関する調査、園比屋武御嶽石門(那覇市)、斎場御嶽(南城市)にて農耕儀礼と儀礼空間に関する調査、ユイマール館(島尻郡久米島町)にて染織技術史に関する調査をおこなった。