研究概要 |
本研究の目的は,自然の地盤(土)および岩盤(岩,岩石)の中に生息する微生物の代謝活動を積極的に活用することによって,安価で環境に優しく耐久性に優れた新しい遺構,遺物,石造文化財などの保存材料(強化材料,接着剤,補填材料など)を作製し,作製した保存材料を使用した土および岩石の力学・水理学特性について微視的かつ空間的に検討を実施し,新たに開発した保存材料の有効性について評価を行うことである。初年度である平成18年度は,(1)炭酸カルシウムの室内析出試験,(2)保存材料を使用した供試体の作製,の2項目について実施した。 平成18年度に実施した研究内容および得られた成果の概要は,以下に示すとおりである。 (1)北海道内を中心とした国内各地から土(微生物)を採取し,土(微生物),有機栄養源,カルシウム源をpH緩衝溶液に加えて作製したカルシウム溶液中から土壌微生物の代謝活動によって炭酸カルシウムを析出・沈殿させる室内試験を実施した。微生物代謝に影響を与える要因として有機栄養源,温度,pHなどに着目し,これらの種類,量,組合せなどを変化させた場合に析出する炭酸カルシウムの量および析出速度などについて基礎的な試験データを取得した。 (2)対象とする地盤として砂質地盤を想定し,その供試体の材料として豊浦砂を使用し,粒子間の間隙に炭酸カルシウムを析出・沈殿させることによって保存材料を使用した供試体を作製した。 (3)平成18年度の科学研究費補助金により購入したデジタルマイクロスコープ,および既設の走査型電子顕微鏡を用いて,炭酸カルシウムの析出試験に使用したイースト菌および供試体(豊浦砂)の粒子間に析出した炭酸カルシウムの結晶形態について,微視的な観点から観察を実施した。その結果,炭酸カルシウムの結晶形態に関しては,豊浦砂の粒子表面上に分布する多数の球状の炭酸カルシウムが確認された。
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