研究概要 |
本研究の目的は, 自然の地盤(土)および岩盤(岩, 岩石)の中に生息する微生物の代謝活動を積極的に活用することによって, 安価で環境に優しく耐久性に優れた新しい遺構, 遺物, 石造文化財などの保存材料(強化材料, 接着剤, 補填材料など)を作製し, 作製した保存材料を使用した土および岩石の力学・水理学特性について微視的かつ空間的に検討を実施し, 新たに開発した保存材料の有効性について評価を行うことである。平成20年度に実施した研究成果の概要は以下のとおりである。 (1) 保存材料を使用した供試体の作製 : 対象とする地盤としては砂質地盤および粘土質地盤を想定し, 土粒子間の間隙に炭酸カルシウムを析出させる保存材料を使用した種々の供試体を作製した。また, 走査型電子顕微鏡およびデジタルマイクロスコープを用いて, 微視的かつ空間的な観点から炭酸カルシウムの析出状況について検討を実施した。 (2) 保存材料を使用した供試体の力学・水理学特性の評価 : 保存材料を使用した種々の供試体を用いて, 室内で力学・透水試験を行った。また, 保存材料による供試体処理後の物性値を処理前の物性値と比較することにより, 供試体サイズにおける地盤に対する保存材料の有効性について評価を実施した。その結果, 処理後の供試体において, 一軸圧縮強度の増加と透水係数の低下が確認された。 (3) 新しい保存材料の有効性に関する評価 : 北海道から沖縄県までの各地から土(微生物を含む)を採取し, 新たに開発した保存材料の有効性について評価を実施した。保存材料を使用した際に見られる炭酸カルシウムの析出量の経時変化に関する評価と, 保存材料の使用前後における土壌微生物の菌数測定および遺伝子解析を実施した結果, 保存材料として有効であるとの見通しが大略得られた。
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