研究概要 |
本研究は将来の大地震の発生確率が高い活断層を対象として,各種の詳細な調査を計画しているが,本年度は以下の断層帯などで詳しい調査を実施した. 養老-桑名断層帯と鈴鹿山地東縁断層帯については,反射法地震探査を実施し,地下構造と地表断層との関係を明らかにした(石山ほか,2007).また,北陸地域の活断層(砺波平野断層帯など)を対象として,地表面の変形と地形面の年代を解明し,変位速度を究明した(Nakamura, et. al.2007),別府地溝南縁の活断層(朝見川断層および堀田断層)の活動性や,鶴見岳山頂溶岩の最新活動期との 九州北部に分布する西山断層帯の変位地形を空中写真判読と現地調査により再検討した.従来,西山断層帯は長さ約20kmの断層帯とされていたが,その南北延長で明瞭な変位地形を示す活断層が見いだされ,この断層帯の長さが約80kmに達することが判明した. 姫路市護持地区においてトレンチ掘削調査し,壁面に露出した地層から採取した試料の火山ガラス分析を進め,山崎断層帯・暮坂峠断層の後期更新世以降の活動履歴を解明した.また大原・土万・暮坂峠断層周辺の段丘地形とその堆積層を調査し,宍粟市川戸地区において暮坂峠露頭を記載した. 長野盆地西縁断層帯において深さ約6mの大規模トレンチ掘削を行い,ウェッジスラストの存在を示す強い証拠が世界で初めて見出された.1847年善光寺地震に伴うウェッジスラストの挙動や,最近4回の古地震活動時期が推定され,活動間隔が約800〜900年と安定している可能性が示された.境峠-神谷断層帯のトレンチ掘削調査では,800〜1520BP暦年に最新活動が推定された.従来推定されてきた最新活動の時期(2370〜4870calBP)は,今回推定された1回前の活動の時期(3840〜4860calBP)と調和的である.これは境峠-神谷断層帯の長期評価に見直しを要請する.
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