研究概要 |
本研究では地球上の炭素シンクとして重要な役割を持つ冷温帯落葉広葉樹林において、土壌圏の炭素シーケストレーションの役割を定量的に評価することを目的とする。本年度は、土壌圏炭素の動態に大きな影響を与える細根のターンオーバーについて、北米の温帯林(Harvard Forest)で行われた放射性炭素(^<14>C)を指標に用いた方法を使い、日本の冷温帯落葉樹林(高山サイト)における細根の滞留時間の推定を試みた。その結果、高山サイトにおける細根の滞留時間は、Harvard Forestと同程度もしくは長いことを示す結果を得た。細根の^<14>C濃度と大気CO_2中の^<14>C濃度の経年変化から得た細根の生成年代から推定する方法では、細根は平均で、リター層では2〜3年、鉱質土層(深さ0-15cm)では10年〜18年、土壌に滞留していると推定された。一方、細根の生成量と分解量が同じと仮定した平衡モデルを用いた場合、根の平均滞留時間は、リター層で4年、鉱質土層(深さ0-10cm)では9年〜10年と推定された。また、Harvard Forestと同様に、先に同サイトで行われたミニライゾトロンから得られた滞留時間(<1.1year)よりもかなり長く、推定手法によって差が有ることが明らかになった。このことはミニライゾトロンでの短期的な推定方法に問題がある可能性があり(Strand et. al., 2008, Science 319:456-458)、両手法について再検討の必要がある。
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