研究課題
高山サイトでは、世界に先駆けて1998年に微気象学的な観測タワーの下に1ヘクタールの調査枠を設定して、樹木のNPPの年変動の調査を開始した。これらの長期的観測データによりNEPと樹木NPPの年変動をリンクさせて解析することが可能となった。その結果、木質部NPPとNEPの間には有意な正の相関が認められたが、葉生産量と分解者呼吸量の年変動は小さくNEPとの相関関係は認められなかった。木質部NPPは、樹木が固定したCO_2のうち木質部に実質的に蓄えられた炭素である。木質部NPPとNEPはパラレルな年変動を示しものの、両者には1tC ha^<-1> y^<-1>程度の差が見られ、高山では森林全体で吸収されたCO_2のうち1tC程度がバイオマスではなく、非生物的にプールに継続的に蓄積されていることが示唆された。このため、深度1mまでの土壌断面を作成して土壌中の炭素量と14Cの測定を行い、土壌炭素への蓄積量の推定を試みた。同様の調査が行われている冷温帯の落葉広葉樹林であるハーバード林と比較してみると、△14C>100‰である新しい炭素の蓄積量は両方の森林であまり差異がなかった。しかし土壌中の全炭素量は高山が26.2 kgC m^<-2>に対してハーバードは8.0 kgC m^<-2>しかなく、非常に少なかった。また高山サイトでは20 cmぐらいの浅いところでも△14C<0‰となるような非常に古い炭素が分布していた。モデルから土壌炭素の滞留時間を計算したところ20 cm深度以上では1,700-3,700年程度となり、炭素の滞留時間がかなり長いことが推定された。このように日本の冷温帯の土壌には、欧米の同様の気候帯の土壌と比較して有機物を多く貯める性質があることが示唆された。
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