本研究では、重要な社会問題となっている気候変動において、現在最も不確定な要素のひとつであるエアロゾルの気候影響、とりわけ炭素質エアロゾルの影響を明らかにするため、新しいエアロゾルの吸収特性測定法である音響光学法を導入し、実験室での黒色炭素エアロゾル放射特性測定、および都市域での実大気中のエアロゾルの測定を行なった。 平成20年度には、まず音響光学法によるエアロゾル光吸収率測定法について、オゾンを用いた絶対値較正法を用い、絶対精度を10%程度に向上させることができた。 ついで、複素屈折率が既知の黒色炭素(ニグロシン)粒子および実大気中の元素状炭素エアロゾルの模擬粒子であるAqua Black炭素粒子を用い、またDMAのほかAPMも併用することによって、完全に単一粒径の黒色炭素エアロゾルを生成することに成功し、それを用いてエアロゾル光吸収率の粒径依存性及びエアロゾルに有機物をコーティングした場合のレンズ効果による吸収率増加について測定することに成功した。また、同時に散乱係数と消散係数も測定した。 レンズ効果による吸収率増加については、従来の光吸収率測定装置では正しく測定できず、音響光学法を用いることで初めて定量化できることが示された。 さらに、8月〜10月にかけて、東京で実大気での音響光学法他によるエアロゾル放射特性の観測を行った。従来法では黒色炭素エアロゾル以外の散乱性エアロゾルの干渉を受け、その大きさは場合により一定しないことを明らかにした。また大気を加熱した場合と非加熱での場合での比較から、エアロゾルの外部・内部混合による吸収効果の増大が約2倍程度あることも明らかになった。
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