研究課題
近年、東アジアにおける人為的なエアロゾルの増大による、気候影響が強く懸念されている。各種のエアロゾルのうち、特に黒色炭素エアロゾル(ブラックカーボン)は太陽放射を効率よく吸収し、大気を加熱するため、人為的なエアロゾルの気候影響評価において最も重要な物質である。本研究では中国国内での観測を実施することにより、気候影響評価の鍵となるブラックカーボンの動態、物理化学特性を解明することを目的としている。平成18年の7-9月に珠江デルタ地帯のおよび北京近郊においてそれぞれ約1ヶ月間にわたり、ブラックカーボンおよび各種エアロゾル物理化学特性の観測を実施した。珠江デルタ地帯の観測は、広州(Guangzhou)の北西50kmに位置するQingyanで主として実施し、一部の観測は広州市内で実施した。また北京周辺の観測は、北京の南東50kmに位置するYufaで主として実施し、一部の観測を北京大学構内(北京市内)で実施した。観測の結果、これらの地域ではBC濃度(炭素濃度)は数μg/m3から最大30μg/m3程度に達し、北京近郊では東京に比べて数倍高い濃度であることが初めて明らかとなった。平成18年度はこの夏の観測に引き続き秋季と冬季にそれぞれ3週間程度にわたり、北京大学構内においてブラックカーボン等の小規模の観測を実施した。この結果、北京市内においてはブラックカーボン濃度は全季節を通じて平均6-9μg/m3程度で、顕著な季節変動は見られないことが明らかとなった。今後は、これらのデータをより詳細に解析し、その物理化学特性の変容過程などを明らかとしていく予定である。
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Journal of Geophysical Research 111
ページ: doi:10.1029/2005JD006643, 2006
ページ: doi:10. 1029/2005JD006257