研究概要 |
近年,東アジアにおける人為的なエアロゾルの増大による,気候影響が強く懸念されている。各種のエアロゾルのうち,特に黒色炭素エアロゾル(ブラックカーボン)は太陽放射を効率よく吸収し大気を加熱するため,人為的なエアロゾルの気候影響評価において最も重要な物質である。本研究ではH18年度に中国の代表的な都市である北京などで,ブラックカーボンの濃度レベルや粒径分布などの観測を,北京大学をはじめとする国際研究チームにより観測を実施した。H19年度においては,これらの観測結果を詳細に解析するとともに,三次元化学輸送数値モデルを使ってその発生源や,輸送過程などの研究を行なった。この結果,北京周辺のブラックカーボンは夜間に濃度が増大する明瞭な日変化をもち,それは大気境界層高度の日変化などによることが明らかとなった。また,大気中で生成する無機エアロゾルなどは,数日の時間スケールで汚染大気の溜まりこみにより濃度増大が観測されたが,ブラックカーボンでは,対応する変動幅は小さい。これは北京におけるブラックカーボン濃度は,北京周辺100km程度以内で,過去24時間以内に放出されたものによりほとんどその濃度が決まっているのに対し,無機エアロゾルなどは500km程度以内で過去3日間に放出された前駆気体からの生成,蓄積によりその濃度が決まっていることによることが明らかとなった。これらの研究成果は現在,学術研究雑誌に論文として投稿する準備中である。
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