本課題では、ミズゴケ層の炭素同位体比を測定することによって、間接的に大気中の二酸化炭素濃度を求め、その変動と海水位変動との時間的前後関係を明らかにする。今年度は以下のことを行った。 1)泥炭試料の採取 申請中の実験では亜寒帯の湿原に焦点を絞って泥炭コア試料を採取する。温帯・亜寒帯地域の中から尾瀬ケ原で日本の泥炭コアを採取した。北海道の湿原はミズゴケに乏しく、試料の採取は行わないことにした。泥炭コア試料の採取はヒラー式の泥炭コアサンプラーを特別に発注し使用した。試料は研究室に持ち帰り、試料の撮影および火山灰の挿入などの地質上の記載を行い、乾燥させ、保存した。 2)泥炭採取地についての情報収集、視察、仮採取 泥炭地として、英国カーライル付近Bolton Fell MossとWalton Mossの視察と試掘を行った。また、フォークランド諸島西島、ニュージーランド北島、チリthe Brunswick peninsula、ポーランド北東Suche Bagnoの情報収集を行い、試料を一部取り寄せた。 3)試料の化学処理 脂質、リグニン様物質、セルロース様物質の含有量を求める。ホロセルロースの混入を完全に除くリグニンの分離法を検討し、完全にセルロースの分解を行うための条件を得た。 4)火山灰挿入年代の評価 ミズゴケ土壌を用いて、降雨による疑似火山灰の垂直移動実験を行い、火山灰の挿入が年代軸の情報として有効であるかどうかを評価した。
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